昨日に引き続き、西式豊氏のデビュー作「そして、よみがえる世界。」について。
ご縁あって、幸運にもゲラの段階で読ませていただくことができました。
SFの世界では、障害者が遠隔技術(や他のテクノロジー)を使い、身体的な限界を突破していく話は、それこそハインラインの「ウォルド」の昔から多数存在しています。
かつて信州カンファでも語らせてもらった通り、かつては、そのようなSF的想像力こそがテクノロジーの発達を促し、それによる社会的な変化が更に文学的な想像力の拡大に寄与するという幸福な関係があり、障害観そのものにも大きな影響を与えてきた、と自分は考えています。
アイトラッカーが一瞬で特別支援教育の現場において手軽な機器になったように、主力企業が高価なデバイスを民生化した途端に、障害者の身体拡張の可能性は大きく変化します(まあ、正確には100万円代のアイトラッカーだって民生機ですけどね)。
自分はアバターで修学旅行、メタバースで職業体験、みたいな話には実はそれほど興味をもちませんが(仕事ですからちゃんと追求してますよ)、現行の感覚代行、MR、テレイグジスタンス等の技術の組み合わせを社会実装することで、重度障害者の生活はすぐにでも大きく変わると思っていますし、それはもう今すぐにでも国が巨費を投じてでも進めるべきことだと思っています。
近年のVR技術や遠隔技術の発展で、肢体不自由者のアバターロボットによる社会参加やセルフ介助の可能性が注目される中、それらや、上述のような類の「社会実装」が実現している世界をリアリティを持って描写している本書は、繰り返しになりますが、特別支援教育の現場の方々にこそ読んでほしい、と思います。
「ちょっと先の未来」、敢えて言うなら生徒たちが卒業した先の社会のイメージを明確にするためにも。
そんな現在のテクノロジーと地続きの世界として、2036年に舞台を設定した「そして、よみがえる世界。」の絶妙な年代設定にも唸らされます。
ああ、まだまだ言いたいことがある。続きます。