最近自分の本が出る宣伝ばかりしていましたが、冗談抜きで出るのが7月、つまり今年の後半でよかったです。
なぜなら、今年度上半期の本はこれに決まりだからです。
「(個別のねらいに合わせて評価ができる)全員参加のゲームでつくる特別支援教育の授業」
高津梓・米田宏樹 編著
いや、これは凄い本です。
信州ABA研究会立ち上げ時から、本当にお世話になっている、筑波大附属大塚特別支援学校の高津梓先生。
尊敬する高津先生の本を雑に読むわけにはいかないので、自分の仕事が一段落してから、今週じっくり読ませてもらいました。
簡単なゲームを通して教科の狙いを達成していく授業作りは、ある意味特別支援教育の独壇場でしょう。
しかし、その場面やゲーム内容を安易に設定すると、ゲームは楽しめず、教科の狙いも達成できず、もっと言うなら、そもそもどちらもどこを狙っていたのかさえわからない授業になってしまうこともしばしば。
安易な「修学旅行の行き先すごろくゲーム」「数の勉強と称して、投げてない子もたくさんいる玉入れ」をどれだけ見てきたことでしょう。いや、やってしまってきたことでしょう。
高津先生の、ご本人そのままの飾らず柔らかくユーモラスな語り口の文章で、うんうん、わかるなー、と思いつつ、すらすら読んでしまうのですが、その中に
自分の「できた」が友達との活動の遂行や達成に繋がる経験を繰り返すことで、「できた」ことが「うれしい」と感じられたり、友達と楽しむために次もチャレンジしたい。友達みたいなちょっと難しそうなこともやってみたい。という意欲が高まったりするといいなぁと思いながら、あれこれ準備をしています。
というような、ものすごく大事な視点がさりげなく書かれていることに気づくとドキッとします。全員参加であることの意義をこんな風に、胸落ちする文章で書けるのは、日頃の支援の視点が確かだからに他なりません。
26ページの「3ヒントかるた」や62ページの「たまいれゲーム」など、一見シンプルな授業に見えて、実は「うまくやるコツ」が惜しげもなく盛り込まれている授業プランには、圧倒されます。前述したようなダメな授業をやっていた自分にしてみると、ああ、すぐに真似したい!と思わせる楽しい(そして実は高度な)アイディアばかりです。いや、本当にすぐ真似していいんじゃないですかね。ここからスタートできるって本当にラッキーです。
全編に渡ってドロップスを大フィーチャーしてくれただけでなく、謝辞にまで入れていただいて、そういう意味でも大事な一冊になりました。
それ自体はとても光栄ですが、もしイラストがすべて「いら◯とや」だったとしても、間違いなくこの本をお勧めしたでしょう。あ、良い人ぶりました。その場合はお勧めを半分くらいにした可能性は否めませんが、それでもこの本の価値は揺るぎなかったでしょう。その時はしぶしぶ上半期ベストに推したことでしょう。
そんなわけで間違いなく、今年上半期の個人的ベスト特別支援教育本。
高津先生をはじめ、執筆者のみなさん、素晴らしい本を世に送り出していただき、ありがとうございました。