分解した要素を結合すれば、総体となるか

大学生の頃に読んだ高橋悠治の著書を、古書で書い直している。
再刊なり文庫化なりを待っていたが、まったくその気配がないためだ。

氏の著書のどこかに
「フルートの音を、吹きはじめの音、持続音、減衰音などのパーツに分解し、それぞれを合成音声で作り出し、繋ぎ合わせて再構成しても同じフルートの音にはならない」
という趣旨の文章があったような記憶があり、それを探している。

1970年代は高速フーリエ変換による音響信号の正弦波分解、その逆の正弦波加算による音の合成が、コンピューターの演算能力の急拡大によって、現実的になってきた時期なので、それこそ
「どんな音も正弦波の加算・変調から作れる」
と思われていた時代だ(あ、僕が氏の本を読んでたのは87年ごろですよ、念の為)。
さすが天才。本質を掴んでいる。自身が電子楽器やコンピュータによる音声合成や作曲に先駆的に取り組んでいたのに。いたからこそか。

学校も同じ。どんな組織も同じ。子供への支援も同じ。
いかに先進校と言われる存在があっても、そこで行われている行為を要素に分解し、あっちの学校の先進的な取り組み、こっちの学校の先進的な取り組み、そっちの学校の先進的な取り組み、などと個々の取り組みを並べたところで。更には全ての要素が繋がってますよ、関係してますよ、さあこれを目指しましょう、目指す気持ちが学校を変えるのですよ、などと言っても
それはフルートの音にはならない。

一番怖いのは、そんな文章はどこにもないかもしれない事。別の人の発言の可能性も十分ある。
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