すでに忘れた方も多いでしょうが、文章力の話の続きです。
久生十蘭、と言っても知っている方はもうかなり少なくなったことでしょう。
夢野久作や小栗虫太郎などと並んで、定期的に再評価でブームが来る作家だったのですが、流石に没後60年を越え、話題になることは減りました。
というか、そもそもこのような作家を再評価する舞台であった所謂サブカルが、文化的には消滅したんでしょうね。
「死体を無事に消すまで」とは、なんとも物騒なタイトルですが、都筑道夫の代表的な評論集の一つです(もう一つは「黄色い部屋はいかに改装されたか?」)。自分はこれを大学2年生の時に読んで、それこそ人生が変わる様な衝撃を受けました。
何百回も読み返した名著ですが、とりわけ久生十蘭に関する論考は、30年以上経っても楔のように自分の心に刺さったままです。
久生十蘭とは? 自分に言わせれば、戦後日本で最も「小説が上手い」作家です。
続きます。